民放/相続の効力
相続人は相続開始の時から、原則として被相続人の財産に属した一切の権利義務を相続する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。
はい。これは民法896条の内容で、相続の基本中の基本です。
一言でいうと、
人が亡くなった瞬間に、その人が持っていた財産上の権利・義務は、原則として相続人にそのまま引き継がれる。
という意味です。
①「相続開始の時から」って?
「相続開始」とは、基本的に被相続人が死亡した時です。
例えば、
- Aさんが1月1日に死亡
- Aさんには妻Bさん、子Cさんがいる
この場合、1月1日の死亡時点で相続が開始します。
「後日、遺産分割協議をした時」ではありません。
②「一切の権利義務を相続する」
ここが重要です。
被相続人が持っていた財産だけでなく、借金などの義務も原則として引き継ぎます。
例えばAさんが死亡したとします。
プラスの財産
- 土地 1,000万円
- 預金 500万円
- 車 100万円
マイナスの財産
- 銀行からの借金 300万円
- 未払いの代金 50万円
これらについて、原則として相続人が引き継ぎます。
つまり、
「土地や預金だけもらって、借金はいりません」
ということには、原則としてなりません。
※借金などを引き継ぎたくない場合には、一定期間内に相続放棄などの手続をする必要があります。
③「ただし、一身に専属したものは除く」
ここが試験でよく狙われます。
一身専属権とは、
その人だからこそ認められていた権利・義務
のことです。
例えば、Aさんが亡くなったとして、
「Aさん本人に対してピアノを教える」というような、Aさん本人との人格的な結びつきが強い契約上の地位などは、性質上、相続人に引き継がれません。
つまり、
普通の財産・借金
→ 原則として相続する
その人本人だからこそ成立していた権利・義務
→ 相続しない
という区別です。
試験ではこう覚えると楽です
| 被相続人のもの | 原則 |
|---|---|
| 土地・建物 | 相続する |
| 預金 | 相続する |
| 貸金債権 | 相続する |
| 借金 | 相続する |
| 損害賠償義務など | 原則相続する |
| 一身専属的な権利・義務 | 相続しない |
土地家屋調査士試験なら、まずは
「死亡した瞬間に、財産も借金も原則として相続人へ。ただし、その人本人だけに属するものは除外」
これで押さえておけばOKです。
そして、この「一身専属」の具体例は、扶養請求権・生活保護的な権利など、身分や本人の人格と強く結びついたものをイメージすると分かりやすいです。
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することはできない。
はい。ここは民法899条の2で、最初はかなり分かりにくいところです。
ポイントは、
相続人同士では「自分のもの」になっていても、法定相続分を超えて取得した部分は、登記などをしないと第三者に「自分のものだ」と主張できない
ということです。
具体例
Aさんが亡くなり、相続人が
- 長男B
- 次男C
の2人だったとします。
遺産として土地1,000万円がありました。
法定相続分は、
- B:1/2
- C:1/2
です。
つまり、法定相続分では、
- B → 500万円分
- C → 500万円分
です。
ところが、遺産分割協議をした
BとCが話し合って、
「この土地は全部Bが取得する」
と決めたとします。
すると、Bはこの土地全部を取得できます。
つまり、
Bの法定相続分:1/2
なのに、
遺産分割によって取得した分:全部(1/1)
となります。
この1/2を超える部分が問題です。
第三者Dが登場
ここで、Cが自分の法定相続分1/2について、第三者Dに譲渡したとします。
そしてBは、まだ土地全部について自分名義の登記をしていなかったとします。
この場合、
「遺産分割協議で、この土地は全部私のものになった!」
とBがDに主張しても、法定相続分を超える1/2の部分については、登記がなければDに対抗できません。
これが899条の2です。
なぜこんなルールなの?
簡単にいうと、
「遺産分割協議をしただけでは、第三者から見ても誰がどれだけ取得したのか分からないから、登記をしてください」
ということです。
登記をしておけば、
「この土地はBが全部取得したんだな」
と第三者にも分かります。
ここが試験で超重要
法定相続分の範囲と、それを超える部分を分けて考えます。
例えばBの法定相続分が1/2で、遺産分割によって土地全部を取得した場合、
1/2まで
→ 法定相続分なので、登記がなくても第三者に対抗できる
残り1/2
→ 法定相続分を超える部分なので、登記が必要
ということです。
イメージすると、
法定相続分1/2
🟩🟩|⬜⬜
↑
登記なしでも対抗できる
法定相続分を超える1/2
🟩🟩|🟦🟦
↑
登記が必要
です。
一言で覚えるなら
「相続で取った分のうち、法定相続分を超えた部分は登記が必要」
です。
なお、ここでいう「第三者」とは誰でもいいわけではなく、その権利について法律上の利害関係を持つ第三者という点も、択一では狙われやすいです。
被相続人が相続開始の時において有していた債務の債権者は、被相続人による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。
はい。これは**「相続人同士の取り分」と「被相続人の借金を誰がどれだけ負担するか」は別問題**と考えると、一気に分かりやすくなります。
具体例
父Aさんが亡くなりました。
相続人は、
- 長男B
- 次男C
の2人。
父Aには1,000万円の借金があり、銀行Dが債権者だったとします。
そしてAさんは生前に、
「私の財産は、Bに80%、Cに20%相続させる」
と指定していたとします。
「じゃあ借金も80:20?」ではない
ここがポイントです。
相続分の指定によって、
- B → 80%
- C → 20%
となっていても、銀行Dは、
Bに500万円
Cに500万円
と請求できます。
なぜなら、BとCの法定相続分はそれぞれ1/2だからです。
つまり、
被相続人が相続分を指定していても、債権者はその指定に縛られない。
ということです。
なぜ債権者を守るの?
例えばAさんが、
「Bには財産を100%相続させる。Cには0%」
と指定していたとします。
もしこの指定によって借金まで、
- B → 100%
- C → 0%
となってしまったら、債権者は困ります。
そこで法律は、
「相続人間でどんな相続分の指定をしていても、債権者は法定相続分に従って請求できる」
としています。
ただし、相続人同士ではどうなる?
ここがさらに重要です。
先ほどの1,000万円の借金について、
B・C間では、
「Bが80%、Cが20%負担する」
という相続分の指定が効くことがあります。
つまり、
銀行D → B・Cに対して法定相続分で請求できる
一方で、
B・Cの内部関係 → 指定された相続分に応じて負担
という形になります。
例えば銀行がBに500万円請求して、Bが500万円払った場合、
本来Bの内部的な負担が80%=800万円なので問題ありません。
逆に、Bが法定相続分を超えて負担したような場合には、相続人間で精算する問題が生じます。
試験ではここだけ押さえる
この条文は、
「相続分の指定は、債権者には対抗できない」
と覚えるとかなり楽です。
例えば、
父A死亡 → 借金1,000万円 → 相続人B・C
法定相続分
→ B 1/2、C 1/2
指定相続分
→ B 3/4、C 1/4
だったとしても、
債権者はBに500万円、Cに500万円請求できる。
これが今回の条文です。
つまり、
相続人同士の「取り分」と、被相続人の債権者が請求できる割合は別。
ここを分けて考えればOKです。
共同相続人中に被相続人から婚姻の為贈与を受けたものがいる場合、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分または指定相続分の中からその贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする旨の規定については、被相続人の意思表示により適用させないことができる。
はい。これは特別受益の話です。
条文が長いですが、やっていることはかなりシンプルです。
まず普通に相続すると
父Aが亡くなり、
- 長男B
- 次男C
の2人が相続人だったとします。
父Aの死亡時の財産が2,000万円。
法定相続分はB・Cともに1/2なので、
- B:1,000万円
- C:1,000万円
となります。
ところが、Bは結婚するときに500万円もらっていた
父Aが生前、Bの婚姻のために500万円を贈与していたとします。
この場合、
「Bはすでに500万円もらっているのに、死亡時の2,000万円もCと同じように1,000万円もらえるの?」
という問題が出ます。
そこで「特別受益」の考え方が出てきます。
① まず「みなし相続財産」を計算する
死亡時の財産2,000万円に、Bが以前もらった500万円を足します。
2,000万円+500万円=2,500万円
これを「相続財産とみなす」わけです。
② 2,500万円を法定相続分で分ける
BとCは1/2ずつなので、
- B:1,250万円
- C:1,250万円
となります。
③ Bはすでに500万円もらっている
Bは婚姻時に500万円をもらっています。
なので、Bについては、
1,250万円 − 500万円 = 750万円
となります。
最終的には、
- B:750万円
- C:1,250万円
となります。
これが条文の、
「相続分の中からその贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」
という部分です。
では、最後の「被相続人の意思表示により適用させない」とは?
ここが今回の問題のポイントです。
父Aが生前に、
「Bに婚姻のため500万円を贈与したけれど、これは相続分の前渡しとして扱わなくていい。BはCと同じように相続させる」
という意思を示していた場合です。
この場合、特別受益として500万円を相続分から控除する扱いをしないことができます。
つまり、
父Aが何も意思表示していない
死亡時財産2,000万円
+ 特別受益500万円
= 2,500万円
B:1,250万円 − 500万円 = 750万円
C:1,250万円
父Aが「500万円は相続分から控除しない」と意思表示
死亡時財産2,000万円をそのまま分ける。
B:1,000万円
C:1,000万円
となります。
試験用に超シンプルにすると
この条文は、
「生前に結婚などのために多額の贈与を受けた相続人は、その分を先にもらったものとして、相続分から差し引く。ただし、被相続人が『差し引かなくていい』と意思表示していたら別。」
という話です。
そして重要なのは、
「特別受益として扱う」=法律上当然にそうなる
「被相続人が意思表示すれば、その扱いをやめられる」
というところです。
土地家屋調査士の試験なら、まずはこの**「特別受益+持戻し免除」**のセットで覚えておけばかなり強いです。
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人はその価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができるが、この権利は、一カ月以内に行使しなければならない。
はい。これは**「相続分の取戻権」**の話です。
条文だけ読むと難しいですが、場面を作るとかなり簡単です。
具体例
父Aが亡くなりました。
相続人は、
- 長男B
- 次男C
の2人。
まだ遺産分割協議をしていない状態です。
このとき、Bが自分の「相続分」を、第三者Dに100万円で売ったとします。
つまり、
B「俺は相続人だけど、遺産分割が終わる前に、自分の相続分をDさんに売ります」
ということです。
するとCは困る
Cからすると、
「え?相続人でもないDが、俺と一緒に遺産分割協議に入ってくるの?」
となります。
そこで法律は、Cに相続分を取り戻す権利を認めています。
CはDに対して、
「あなたがBに払った100万円と、必要な費用を私が払うので、その相続分を私に譲ってください」
と言うことができます。
これが相続分の取戻権です。
お金の流れ
例えば、
B → D
相続分を100万円で売却
その後、
C → D
100万円+必要な費用を支払う
すると、
Dが持っていたBの相続分
↓
Cが取得
となります。
結果として、
B・C・D
という状態ではなく、
B・C
で遺産分割を進められることになります。
なぜこんな制度があるの?
一番大きな理由は、
第三者が相続人の中に入ってくることを防ぐため
です。
例えば、家族の遺産分割協議をしているところに、
「私はBさんから相続分を買いました」
と突然Dが入ってきたら、他の相続人は困りますよね。
そこで、
「第三者に売られたとしても、他の相続人がお金を払えば取り戻せる」
という制度になっています。
そして超重要なのが「1か月」
ここは試験で狙われます。
Cが取戻権を行使できるのは、
相続分の譲渡があった時から1か月以内
です。
例えば、
4月1日
BがDに相続分を譲渡
↓
5月1日まで
にCが取戻権を行使する必要があります。
1か月を過ぎると、原則としてこの取戻権を行使できません。
試験ではこう覚える
相続分を第三者に譲渡
↓
他の共同相続人が取戻し可能
↓
譲渡の価額+費用を償還
↓
1か月以内
これだけまず覚えておけばOKです。
さらに一歩
ここでいう「相続分」は、特定の土地そのものを売ることとは違います。
例えば、
「遺産の土地Aを100万円でDに売った」
という話ではなく、
「自分が相続人として持っている相続分そのものをDに売った」
という話です。
この違いは、土地家屋調査士の試験でも混同しやすいので注意です。
